ICU

  • 2019.05.03 Friday
  • 15:40

 

 翌日、母は早くからT病院に行った。私も午後一番に病院に到着するように行った。途中、クラシックのCDとポータブルディスクを購入した。音楽やテレビはICUでも利用できるということだった。病院に着くと、父は目覚めていてテレビを見ていた。いつもと変わらぬ父だった。そのあっけなさにこちらが驚いたくらいだった。「ここが痛てぇんだよ」と胸の辺りを指しながらゆがんだ顔をしたが、そういう風に言うときには大丈夫な証拠だった。父は、本当に辛いときや痛いときには口に出さないのだ

 

 ICUを見渡すと、そこには私たち家族のように見舞いに来ている人たちがたくさんいた。みな、ただ側にいるだけだ。ICUでは家族は何もできない。ただ、側にいることしかできない。父を担当している看護師がちょくちょく父を見に来た。父は、あの看護師はいいとか悪いとか、まるで自分の会社の従業員を査定するように私たちに話した。

 

 「もう、お父さん、看てくれてるんだから、そんな文句言わないでよ」と言ったが、確かに「えっ」と思ってしまうような看護師もいた。ICUでも歯ブラシなどをするのだが、体中にたくさんの管をつけられていて、父はまだ思うように体を動かせない。ある看護師が歯ブラシをケースから出してテーブルの上に投げるようにして「はい、歯ブラシしてくださいね」と言って去っていったときには、ちょっと驚いた。父は誰かの助けを借りないとまだ何もできなかった。私たち家族がいたから、「家族が助けてやってくれ」という意味で置いていったのか、あるいは、「自分でできるようにならないとICUからいつまで経っても出られない」という意味で置いていったのか、あるいはただ単に機嫌が悪かったのか、判断しかねた。いずれにしても、家族が父の側にいることが看護師の業務に支障をきたすようならば、あまりここに来ない方がいいのかもしないと、ふっと思ったが、それでは父がかわいそうである。結局、ICUに入っていたのは3日間だったので、そうこう考えているうちに一般の病室へ移動することになった。

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